ブラジルの穴/Tsu-Yo
地面を掘り続ければブラジルに行ける
そんな話を簡単に信じる子供だった
なにひとつ疑うことなく
銀色のバケツに小さなスコップを入れて
近所の公園へと向かった
掘る場所といったら砂場に決まっている
陽の光が眩しい午後の早い時間から
きみは夢中で砂場を掘りはじめた
砂はさらさらともろくて
掘ったそばから崩れて埋まってしまう
それでもきみは必死に
掘って掘って掘りまくった
ブラジルに行くのだから
自分が通れるくらいの穴じゃなきゃだめだ
はじめはスコップで
それからバケツを使って砂をかき出した
どれくらいの時間
きみは掘り続けていただろうか
穴はすでにきみが胸まで
すっ
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