自作小説冒頭、つまり失敗作のかけら/佐々宝砂
 
るみたいな気分だ。「助けてくれ!」ぼくはわめいてみた。誰も答えなかった。

 ぼくはもがいた。必死にもがいて、この悪臭漂う汚い沼から逃れようと試みた。体重を持ち上げるだけの腕力はあったが、腐れ切った忌々しい畳は、ぼくの体重に耐えるだけの根性を持ち合わせていなかった。もがけばもがくほどぼくの身体は沈んでゆく。ぼくはやけになって足をばたつかせた。すると、足の先が何もない空間を蹴った。そうか、だったら下に落っこちてしまえ――ぼくは、畳の下にあるものについてはなるべく考えないことにして、無我夢中で足をばたつかせた。

 ロープが千切れるような音が聞こえ、ぼくは落下した。腐って溶けた畳が、ぼくの頬を
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