回帰線/ホロウ・シカエルボク
た犬がひょこひょこと飛んで行く
そのさまは軽やかだったけれど
進めば進むほど沈んでいくみたいに見えた
ああ、痩せた犬、お前の汚れたその尾には
誰かに見せつけるような誇りがまだあると言うのか
近くの宗教施設がひっきりなしに誰かを呼び出している
そこには祈りは感じられない、てんでシステマティックなただの組織だ
女子高で女子高生が騒いでいる
野良猫でも迷い込んだらしい
可愛い〜、と叫ぶ彼女らに
一抹のずるさを見たような気がして早めに通り過ぎた
コンビニのレジの女はいつも
(この人はどうしてこんなに表情がぎこちないのだろう)とでも言いたそうな目で俺のことを見る
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