根の国/リーフレイン
 
卑しからぬ風情の男が現われて「なるほどあなたは、正直ですなあ、あちらは地獄も地獄直行道ですよ」と教えてくれる。さほどにご親切でなくてもいいのだがと思いつつ。「ありがとうございます」

そうか、浄土への道が業を捨てる道であるとするなら、こういう罠が一番効くのだろうなぁ。何が嘘で何が真実かもわからん状態でいったい何にこだわるというのだろうか。痛い足をひきづって歩く。考えてみれば、誰より速くつく必要もなし、誰よりきちんと歩く必要もなし、これほど気楽なことは現世ではなかったかもしれないと、およそどうでもいいことに一喜一憂していた生前の愚かさを思ったり。地獄への道の尖った石の上でかたつむりになったり
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