ホワイ/ホロウ・シカエルボク
なった気がした、どんなに洗っても
どんなに洗ってもきっとその臭いは取れないだろうという気がしたんだ
堤防沿いにいた年寄りが悲鳴のような声で早くあがって来いと何度も繰り返した、俺はさらに深いところへと歩を進めた
きっと、自殺志願者みたいに見えたに違いない―それにしてもあの年寄り必死すぎる―人命救助の賞状でももらいたいのか
それなら飛び込んでこなくちゃ、俺みたいに、深くて早いところまで飛び込んでこなくちゃ―俺は振り返り、そいつに向かってもっと大きな声で叫んだ、お前がここへ来いと
年寄りはきょとんとしてそれきり叫ぶのを止めてしまった、きっと
俺が言ったことの半分もやつは理解出来なかっただろう
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