風船/虹村 凌
 
「吸わないの?」

子供達は風船を手にジャンプを繰り返す
無邪気に空を飛べると信じ込んでいるのだろう
それが彼らの仕事なのだから

「きっとあなたは
風船で空を飛ぶ詩を書いたでしょう」
僕が手を伸ばさないでいた煙草を
君は再び口元に戻しながら言った
僕は黙ったまま
風船を渡し続ける足の長いおじさんを眺めている
「風船で空を飛ぶなんて
とても素敵で詩的だものね」
彼女はまっすぐ前を向いたままで言う

詩人はペンを手にノートに書き込む
純粋に空を飛びたいと願いを込めながら
それを叶えるのが自分の仕事だと信じて

君は煙草を空き缶の中にしまうと
それを僕に手渡し
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