海遊底辺 /藤原有絵
女の話は本当に長くて
私は小一時間ほど一言も口を挟まなかった
敢えてソーダ水をすすめて
その甘さでやっと
彼女は私に気づいたみたいだった
小魚たちが獰猛で大きな生き物を擬態して
私の斜め上を泳いでいく
厚みの無い強さで
一匹のエイが真ん中からそれを崩す
散り切りになって
また集う
それが習性 なんでしょ
彼女が左手で顔を覆って
銀色の指輪に水滴が滑っていくのを
ぼんやりと眺めていた
二人だけど
二人ではない
その事って
そんなに君たちを苦しめてしまうんだ
言葉も思いも尽くせども
あと少し
足りない な
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