「 コワレ。 」/PULL.
い頭のコワレだからってあきらめちゃ駄目、コワレた分はきっちりもらいなさい、ぶんどりなさい、やっつけてやりなさい、と言った。そうよ!、とどこかの通行人が相槌を打ち、そうだ!、とさらにどこかの通行人が相の手を入れた。相の手と打ちはまたたく間に広がり、すぐに人だまりができた。人だまりの口は、口々に、コワレたコワレた、と言い、その隣の口がまた、コワレた、と言うのだった。
男は、小さく、なっていた。
男は、コワレた、と言われるごとに溜息をひとつ、つく。なので、ひとつつくごとに男は、小さくなり、溜息ごとに、一まわり、萎んでゆくのだった。やがて男は手に乗るほどの大きさになり、わきゃわきゃと踊るわたし
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