「 コワレ。 」/PULL.
 
ばあちゃんなの、と言うのだった。娘たちは、皆死んで、男と、同じ墓に入った。風の心地よい朝には、男と娘たちが好きだった花を持って、参ることもある。そんな日の夜には、男の肌のぬくもりを想い出し、眠れなく、なる。あいしてる、あのか細い声が、もう一度聞きたく、なる。わきゃ…また沈んだ、声で、わたしが喋り出し、踊り出す。あいしてる、あいしてるよおまえ、男は何度もそう言ったが、あいしてくれているか、と聞いたことは、なかった。もし聞かれていたら、どう答えただろうか、あいしていたのだろうか、解らない、ながく、あまりにもながく、すべてが経ち過ぎてしまった。だが聞きたい、もう一度、あの男のか細い声で、あいしてる、その
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