「 コワレ。 」/PULL.
 
だ、声を上げ、男の棺のまわりをぐるぐると、まわり、まわり、まわり、続けた。それを見て娘たちはまた泣き出し、父親そっくりの涙を、こぼした。娘たちは最後まで、男に近く、おかあさん、と呼んでくれたことはなかった、確かに産み落とし、確かに産み落とされたもので、あったはずなのに、娘たちは、遠い、相容れないものたちであった。それはコワレたわたしが、男の、どのものにも納まらなかったことと、どこか似ていた。だがそれでも、相容れないものは、相容れない、娘とは、そういうものだった。

 気がつくと随分と、居ついて、いた。近ごろは孫たちが、ひ孫を連れて遊びに来るようになった。ひ孫たちはことのほかわたしになつき、日が
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