さよなら世界/ホロウ・シカエルボク
 
露の名残が靴を濡らして、靴下にまで滲んでいたけれど
僕らはそうして歩いているよりほかに思いつくことは何もなかった
選択肢が無いという選択肢、つまり成り行き
何故か声を出してはいけない気がして
この世界にはこの世界だけの
しんとした調和があるようなそんな気がして
疲れたか、と目だけで君に尋ね
いいえ、とやはり目だけで君は答え
それから僕らはどちらからともなくわずかに口角を緩めるのだ
いつも、話さなくても構わないような事まで言語化している自分達を可笑しく感じて
そのあと僕らはあれこれと考えながら歩く事を止めて
濡れた靴で濡れた地面をぴちゃぴちゃ鳴らしながら歩いた、たった一度だけの
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