障子の影/佐々宝砂
ろかもわからなくなったのかなと思って振り向くと、そこにも閉まった障子、女の影。
さて困った。どっちから帰っていいのかわからない。床の間が左で窓が右だったか、それともその逆だったか。ぼくは半泣きになった。それから思いついて雨戸と窓を開けた。窓枠によじ登り、飛び降りると、そこは、よく知っている裏通りだったのさ。
裸足で、半べそで、情けない気持ちでそこに突っ立っていると、うわーっというかん高い声が響いてきた。やばい、とぼくは思った。ぼくがランドセルを持たなかったというので怒っている悪ガキたちだ。ぼくは走った。走って走って走ったけれど、結局連中につかまってえらい目にあった。だが、そのことは
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