眠りがすべてを抱きしめるなんて嘘さ/ホロウ・シカエルボク
になった
込んだ歩道をなんとしてもすり抜けようとする事が嫌になった
取るに足らない喧嘩をいちいち買うことが嫌になった
それが大して意味もないことと知っていながら今まで繰り返したのは
それがなければ何も無いかもしれない自分を知ることが怖ろしかっただけ
河縁のベンチに腰掛けた寒い昼間
向かいのラブホテルから一台のタクシーが滑り出す
中に乗っている男女はお世辞にもまともには見えなかった
おまえは失うということはある意味で楽なことだと
それは捨てるということよりは多分ずっと楽なことだと
缶コーヒーの甘味に顔をしかめながらそう考えている
失う事の方が楽なのは知れた事
荒れた気分の
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