眠りがすべてを抱きしめるなんて嘘さ/ホロウ・シカエルボク
瞳を閉じて
静かにしていなよ
いまのおまえには
むずかしいことが多過ぎる
瞳を閉じて
自分が呼吸している事を確かめるんだ
空気が鼻から来て
また出て行くのをたしかに感じるんだ
世界は残酷だけど
それでお終いになるわけじゃない
郵便受けの中で取り忘れた手紙が
冬の初めの陽射しを受けて赤く変色する
手遅れかもしれない便りを目にするときに
手遅れであって欲しいと考える事は別に悪いことじゃない
マクドナルドで落とした小銭を拾う
女子高生の足元に感動してはいけない
そいつはすでに汚れたものを咥え込んでいる
廃墟のビルの
屋上に腰を据える鳩
届かな
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