秋の金魚と揺れる水/千月 話子
 
 コロロンと
高音を鳴らしますと
驚いた小さな雀が柿の木で跳ねて
上方から私達を そっと覗きます

 柿の木には数個だけ実を残しておりますので
 お詫びに どうぞお召し上がり下さいな


銀ダライは紅緒さん用にと
お祖母様に頂きました
少し凹んだタライに程好く水を張り
同じ色の銀の柄杓に水を入れては
高所から流し入れ
流し入れを繰り返しますと
冷たく堅い水は いつしか
優しく緩む水へと変わって行くのです


私は両手で直に紅緒さんを掬い
暴れないように ようし、ようし
となだめながらタライの丸い水へ
ゆっくりと浸してゆきます

 ようし、ようし、良い
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