秋の金魚と揺れる水/千月 話子
良い子だね
ガラス器の金魚鉢の水は半分取っておいて
馴染みある匂いを半分残します
玉砂利に絡みついた沈殿物を
きれいに 洗い流し流してゆく時に
細いミミズの塊が最後に流れて行きました
紅緒さんは お肉が嫌いですか?
なら ひらひらのを差し上げましょうね
銀ダライで スイスイ泳ぐ小さな金魚を
飛び出してしまわないかと目の端で追いながら
きれいに洗った金魚鉢に
紅緒さんの居た 古い水と
紅緒さんの居る 新しい水を
交互に入れ 水草を入れて
庭の秋桜が 軽い風に触れて
みんな みんな 揺れています
縁側に置いた金魚鉢が
淡い光りを屈折させ
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