冬のはじまり/プル式
本、兄弟3人で分けるというのがケーキの代わりだったりした。貧乏な家にありがちな、父は暴力癖の無職、母がパートで働く、という典型だったので、子供の頃の冬には、いい思い出が
無い。家に帰れば恐怖が待っているし、外は寒い。母の帰る時間は遅く、そんな時間まで外に居る事は出来ないし、何より、ご飯を僕ら兄弟が作らなければ、また殴られるから、どうにも帰らなければならなかった。そうして、ぎりぎり許される時間まで外に居ると、大抵の家は夕飯時になって、ちゃんとした暖かい匂いがしてくる。僕ら兄弟はそんな窓を眺めまいと、近くの空き地で時間をつぶしていた。だからと言う訳では無いのだけれど、冬の夜に明るい窓を見ると、無性に
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