冬のはじまり/プル式
ながらため息をつくおばさん。ぼくらが公園を一周りして、帰ろうとした時、振り返るとおばさんが、一生懸命に手を振っていた。僕らは小さく手を振り返して会釈をすると、そのまま居酒屋で酒を飲んだ。もちろん、そのおばさんの話を肴に。
・冬の夜の始まり
なんだか寒いな、と思っていたら、外に出ると吐く息が白くなっていた。そんな話では無いのだけれど。
冬の夜には不思議な力がある。思いで話をしたくなるのも、もしかしたらそうなのかも知れない。少しオセンチな気持ちで、肌に痛い様な風を受けて自転車で走ってみたり、マフラーで顔を埋める様にしてみたり。
子供の頃、僕の家は本当に貧乏で、誕生日に缶ジュースを1本、
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