冬のはじまり/プル式
 
ふらっと、友人と散歩に行った時、見知らぬおばさんから声を掛けられた。ルミナリエという、神戸のクリスマスイルミネーションの事と、行き方、そのご近所のお勧めスポットなどを延々と説明された後、誇らしげに胸を張るおばさんは、僕と友人を見て「彼女?やるなぁ、ひゅぅ、ひゅぅ」といいながら、鹿のイルミネーションの中に消えて行った。もちろん、僕と友人はあっけに取られながら、それでも何となく和み、そのおばさんを見送ったのだ。きっとあの頃も、僕は寂しがりで、人に甘えてばかり居たから、本当にそう見えたのかも知れない。そうして多分、おばさんも寂しかったのだろう。冬の夜に一人で公園に居るおばさん。イルミネーションを眺めなが
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