冬のはじまり/プル式
 
動かしていたりもする。だから、無い方が本当はいいのかも知れない。だけど、今、もし初めて空を見たときの気持ちが僕に有ったら、世界はどう見えているのだろう。唯一、僕の感情を記憶する「僕」というものはどうやら不完全らしく、あまり昔の感情を伝えてはくれ無いようである。

・コンドルは飛んでいく

僕らが仕事を休んで、のんびりと一日を過ごしたその日の帰り、彼は最寄りの駅に着くと、それじゃ、と言って電車をおりた。おりて空いた隅っこの席に、僕はなんとなく、つめて座り直した。それは何となく、居心地が悪く寂しい気がした。
それからと言う訳じゃないけれど、僕は真ん中に座る様になった。長い電車の座席の真ん中に
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