七人の話 その2/hon
 
気を失っていただけで、幸い手首のケガの度合いはひどくないということだった。
 それを聞いて全員が安堵した。彼女の周りに大勢で屯していてもしょうがないと、仁乃は主張した。秀人は睦夫と奈々子を連れ、食堂へ引きあげた。仁乃と充と小遥が部屋に残った。志穂子はベッドですうすうと寝息をたてている。
「ねえ、シイちゃんの部屋の床一面に散らばっていたこれ……」仁乃は赤く薄い小片を指先につまんで言った。「これって花びらじゃないかしら。生きた本物の花。たぶん、バラの花びら」
「花びら? バラの?」充がいぶかしそうに言った。
「そう」仁乃が答えた。
「姉さん、バラを見たことあるのかい。本物の」
「ないけど…
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