七人の話 その2/hon
、志穂子が床に倒れていた。床一面が鮮やかな赤に染まっており、その上に彼女は横たわっている。
「これほどの血が?」充は一瞬うろたえた。「いや、ちがうな、血ではない。驚かせる。こんな大量の血が、人の体から流れ出るわけがないんだ。とにかく……」
カーン、カン、カーン、カン、カーン、カン……
充は、急いで通路の壁に吊るしてあった金物を打ち鳴らした。
長音、短音のシークエンス。これは、『非常事態につき全員集合』の合図である。
「どうしたの」
階下から仁乃が叫んだ。
「シホがケガした。ハサミの刃で手首を切ってる。すぐに救急用具を……」
志穂子のケガが伝わると、ある種の恐慌状態が全員に
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