七人の話 その2/hon
「俺たちは七人でひとつ」というのは、秀人がよく言う口ぐせであった。
しかし、今では彼らの食卓は六人の食卓である。七人が揃うことはない。なぜならば、志穂子がずっと自室から出てこないからである。
志穂子が自室から出てこなくなって、およそ二年が経つ。
彼女が部屋に閉じこもりはじめた当初、秀人は怒ったり、なだめたりして、なんとか彼女に食事を共にさせようとした。
「ムリ。ないから。絶対、ムリだから」
あまり強いて部屋から出そうとすると、志穂子はそんなことを言って、震えたり、叫んだりした。
仁乃がとりなして言った。「そうね、無理強いは良くないわ。ここまで抵抗を示すというのは…
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)