七人の話 その2/hon
 
ある。
 いつも厨房で食事の支度をするのは、仁乃の役目である。
 仁乃は“倉庫”から取って来た食材で料理をする。倉庫は火星棟の二階にある。そこには真空パックの食材と調味料しか存在しない。それらは半永久的に保存がきくが、食材としてはなんとも味気ないし、種類も限られている。
 仁乃は、少しでも人の手が加わった温かみが感じられ、単調を避けバラエティに富んだメニューとなるように、工夫と研鑚を重ねて、独自の料理体系を編み出した。それらは、材料が材料だけに、美味とまでは呼びかねるものだったかもしれないが、ともかくも間違いなくこの家の家庭料理だった。そもそも、おいしさの程度を他とくらべて判断しようにも、彼
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