七人の話 その2/hon
、この」
場の雰囲気は、すっかり険悪になった。
「やめて! やめて、やめて、やめて」仁乃が悲鳴のような声をあげて、二人の間に割って入った。「嵐が吹いてる。嵐を家の中に持ち込まないで。ほら、小さい子らが怯えてる」
瞬時、食堂は静まり返り、緊張をはらんだ沈黙があった。
仁乃は充に取りすがって言った。「ミツル、あんたが良くない。ヒデト兄さんに謝んな」
「はあ? なんで俺が……」充は目を剥いて口ごもった。
バシッ! 仁乃は平手を充の頬に叩き込んだ。「謝んな」
充は仁乃の顔をゆっくりと見返した。仁乃の目は今にも泣きそうに潤んでいたが、その奥には揺るぎのない強い意志が据わっていた。この
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