七人の話 その2/hon
 
ような顔をした。
「そう。でも、この花びら、しっとりと濡れていて、柔らかくて、手ざわりが、私には本当の生きたものにしか思えない」
 仁乃が手を伸ばして、バラとおぼしき赤い花片を、つまんでいた指から離すと、それはひらひらと舞い落ちて、床を赤く染めて散らばった同様の小片の群れの上に、ぽとりと着地した。
 その後、自分が残って志穂子を看てるからと小遥が主張したので、仁乃と充は食堂に戻った。


 食堂に二人が戻ると、秀人と充の間で凄絶な言い合いが始まった。
「……ミツル、お前、何やってる。部屋に食事持って行って声かけて、返事がなかったら、普通はおかしいと思うだろ。なんかあったと思うだろう。
[次のページ]
戻る   Point(0)