詩集に纏わるエピソード (2)/深水遊脚
 
、その明石海峡大橋の開通により職を失った人など、様々なエピソードが詩に織り込まれている。不思議と暖かさを感じるのは、ありのままに観察し、受け止めているからではないかと感じる。エピソードは聞かれるのを待っている。自分のことで頭がいっぱいの詩人には聞く余裕すらない。そのエピソードを、私情を交えずにまずはちゃんと受け止めること、聞き上手になること、そこから生まれてくる詩がたしかにあるのだ。群集のなかのひとりとして詩を読み、詩を書くというのは、こういうことではないだろうか。ちゃんと受け止めることは優しさ、思いやりでもある。それがあるから、いくつもの人のエピソードが重なり合うときに温かさ、愛しさを帯びるのか
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