詩集に纏わるエピソード (2)/深水遊脚
 
りながら一層ふかく人をみつめ、人にまたみつめられながら行き着く所まで歩いているのかも知れません。私の詩もそこから始まったように思います。

(引用終わり)


北岡都留氏の詩集『空の重ね着』のなかには同じタイトルの詩があり、空の碧さに幾重にも重なる人のかかわりを喩えている。重ね合わさったひとつひとつの人たちのエピソードは、決して明るいものばかりではない。それでもそれらが重なった空の碧さは、温かさ、愛しさを帯びるものとして描かれる。線香の町に住み、線香のにおいが染み付いて離れない年頃の女の子、民宿のパートをしながら老いた母親の面倒をみる初老の女性、明石海峡大橋の過酷な建設現場で働く男性、そ
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