本/小原あき
 
を装っているけれど
市場みたいに騒がしい

無抵抗にお腹を見せて
店員と変わらぬ笑顔で
いらっしゃいませ、と言う

手に取ってみると
一層、瞳を輝かせて
立ち読みの雑誌は
くたびれた体をしながらも
懸命に笑顔を振りまいている

大型書店は
身を削る音がする
それは紙の擦れる音に似ていて
少しずつ彼らの寿命が縮んでいるのがわかる

雨が降れば良い
しっとりと降る
雨が降れば良い



古本は
疲れた体で立っている
いくらか人間臭いのは
手垢のせいか
それとも一度は人間のものとされたせいか

リサイクルショップは
芳香剤の臭いと
本の人間
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