特別であり普通である私たち/岡部淳太郎
 
きている。いまここにいる「私」はそれらの人間たちのほとんどにとって未知の存在である。だから特別も普通もない。未知であるということは考慮のうちに入っていないということであるから、特別だの普通だの考える必要もない。ところが、この世界で少なくともたったひとりだけ「私」を特別な存在であると見做している者がいる。言うまでもないが、それは「私自身」である。いくら自分は普通の人間であり群集の中のひとりに過ぎないと言ってみたところで、やはり自分自身は他の誰にも勝って特別な存在である。これは誰が何と言おうと、いくら「普通」の側からの異議があったとしても揺らぐことのない真実だ。何しろ人はみな自分自身の視点でしか物を見
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