詩集に纏わるエピソード (1)/深水遊脚
用しつつ、展開してゆこうと思う。
(引用 『時刻表』嵯峨信之)
死は肉体のなかでは死なぬ
思考のなかをほんとうの死はやつてくる
鳥の墓は太陽のなかに在る
そして人間の墓は言葉のなかに在る
(引用終わり)
先に書いた「詩集の題名を変えてしまうほどのエピソード」というのは、こういうものだった。当初この詩集の題名を著者は「築地国立ガンセンター病院」にしようと考えていた。著者の妻がそこで生命を終えたのだ。その詩集の装丁を、著者の知人である版画家の駒井哲郎氏に依頼したのだったが、間もなく駒井氏もがんで病床に就き、数ヵ月後に命を落とした
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