詩集に纏わるエピソード (1)/深水遊脚
 
うに考えたい。著者の手紙をみて、著者のことを思いながら詩集を読んでいたのだと。手紙は栞代わりにして、詩と手紙の両方を慈しみながら本棚に大切にしまっていたのだと。古本屋に本が流れるのは、不要になったときばかりではない。いろんな事情があるのだ。詩集を作るとき、贈るとき、起きる様々な出来事に思いを馳せるのもなかなか面白いものだ。純粋に詩と向き合うのとは違うけれど、こんな楽しみ方もいいと思う。

 今回私が手にした詩集の中でも、興味深いエピソードのあるものがいくつかあった。嵯峨信之氏による『時刻表』では、詩集の題名を変えてしまうほどのエピソードが著者自身によって栞で語られていた。北岡都留氏の『空の重ね
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