七人の話/hon
る。そのうちとうとうみんな根負けして、二人の性別にふさわしい恰好のことはついにあきらめてしまったのだった。
女の姿の睦夫と、男の姿の奈々子。
二人はともに同い年の九才で、七人のなかでは最年少である。
――カーン、カーン、カーン……
遠くに離れた別棟から金物を打ち鳴らす音が響いてくると、二人は顔を見合わせて同時に叫んだ。
「お昼!」
二人はぱっと立ち上がり、一階へ向かう。奈々子は人差し指で壁のスイッチをはねあげ、階段の灯りを点けた。
「電気!」奈々子が鋭く叫んだ。
「きった!」睦夫はすでに踊り場の電灯を消していた。
階段を降りるとすぐに金星棟のホールになっている。
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