七人の話/hon
 
ていたのである。
 睦夫と奈々子は、最近のお気に入りの場所である“金星棟”一階階段の踊り場に敷かれた紫色のカーペットの上にぺたんと座りこんで、およそこんなことを話し合っていた。
 ふわりとふくらんだ黄色いスカートを履いて、髪を肩甲骨のあたりまで伸ばし、どうみても女の子に見える方が男の睦夫であり、くりくりと活発に動く目の、髪を短く刈った、チェック柄の膝丈のズボンを履いた、どうみても男の子に見える方が女の奈々子である。
 兄や姉たちは、かつて二人に男の子らしい、あるいは女の子らしい恰好をさせる努力をした。しかし、強いてそういう恰好をさせても、二人はいつの間にか互いの服を取り替えてしまうのである。
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