社/九谷夏紀
 


さー さー さー さー


大きな幹を辿って見上げると
高い高い所で
葉っぱが風に揺られて擦り合っているのだった

庇と庇の間のわずかな空間を抜けて
この木は人々に囲まれて守られてきたのだ

地面から根っこがむき出しになって
簡単に木の周りを一周出来なかった私は
その根っこは踏まないようにして
横道をゆく

あの木を後ろにたずさえて
いつからここにいるかわからない小さな狐が2匹
茅葺きの小さな家の前に背筋を伸ばして座っていた

塵は払われ
古い佇まいは
あくまでも簡素に

だからこそ
鎮まるのだった

ただ生きているから息をす
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