あの日、教会の裏庭で彼女は微笑みさえした/ホロウ・シカエルボク
しまったブラウスの袖を見て
彼女は穏やかな表情で微笑を浮かべさえしたのだ
季節は今頃で
今年よりも少し寒い薄曇の暮れ方だった
あの日、あの教会の裏庭の焼却炉の側で
彼女はたしかにしっとりとさえしていたのだ
あれからどれほどの月日が過ぎたのか、なんて
じっくり考えてみたことがなかった
それどころか
思い出すことさえなかった
僕にとっては彼女はもう遠い昔で
『それほど印象深い付き合いではなかった』、という引き出しの中で、それは
まるで日に焼けたように色褪せてさえいたのだ
彼女は知っていた、思い出の上手い作り方を
あのときふたりが迷い込んでいた迷路がどういったものであっても
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