ターテン/カンチェルスキス
トイレに向かうみんなの後ろを
ターテンがいつものように
ぎこちなく歩いてた
そのとき
たぶん遠足途中だろう
地元の小学生たちが
ターテンのまわりに
近づきいつのまにか囲んだ
しばらくすると
囃したてるような声を出しながら
ターテンの不自由な両足を
蹴りはじめた
やめろ、やめてくれ
ターテンの口の動きで
それがわかった
バスの中にいた担任の教師が
障害のある子に対する理解が
この国ではまだ十分に教育されてないんだろうと
表情変えずつぶやいた
バスに残ったみんなも
ターテンをただ見下ろしていた
溶けかけのスライムみたい
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