月下美人への恋/榊 慧
 
も 何度でも キミの名を、呼びかける。


花に恋した哀れな男の、儚い愛の物語。

この物語が海を渡って、何かの縁でキミの元に届いた時、
キミは男のことを不幸だと思うかな。

事実はきっと誰にも分からないんだろう。

もしキミの傍に愛する人がいるのなら、きっとこれは恋に破れた男の物語なんだろうね。

それでも男は幸せだったんだ、なんて言ってもきっと意味がないと思うんだ。


そうだろう?

キミの物語がキミのものでしかないように、オレの物語はオレの物語でしかない。

きっと今この瞬間も、世界のどこかで誰かの物語が綴られているに違いないと、
そう思うとこの世界
[次のページ]
戻る   Point(3)