月下美人への恋/榊 慧
も 何度でも キミの名を、呼びかける。
花に恋した哀れな男の、儚い愛の物語。
この物語が海を渡って、何かの縁でキミの元に届いた時、
キミは男のことを不幸だと思うかな。
事実はきっと誰にも分からないんだろう。
もしキミの傍に愛する人がいるのなら、きっとこれは恋に破れた男の物語なんだろうね。
それでも男は幸せだったんだ、なんて言ってもきっと意味がないと思うんだ。
そうだろう?
キミの物語がキミのものでしかないように、オレの物語はオレの物語でしかない。
きっと今この瞬間も、世界のどこかで誰かの物語が綴られているに違いないと、
そう思うとこの世界
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