月下美人の恋/榊 慧
 
なんて勘違いしないで。


人間が口にする愛なんて言葉は芝居の文句と同じ。
そんなもので、純情な花を誑かさないで。


浮かれた人間と言う生き物に、温かな心があるなんて信じてなかった。


手を伸ばしても届かない太陽の光と。
(だって月下美人だもの。
      それでも、太陽に憧れることぐらい許されたって良いでしょう?)

時に哀しそうに揺れる深い海の瞳。

春の息吹を感じさせる、優しい笑顔と。

愛すべき夏の、陽気さ。



花だって、愛を感じ取ることはできるって知っている人は何人いるのだろう。


寂しさを指摘されたからじゃなかった。
指摘
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