月下美人の恋/榊 慧
人間が嫌いだった。
どうしていつも私の邪魔をするの。
人間なんて高慢で、わがままで、欲深くて、身勝手。
花は散るからこそ美しいだなんて。
どうしてそんなことが言えるの。
花は散ってもまた実をつけて花を咲かせると、何故わからない?
いつまでも、未来永劫、尽きない命を天から与えられているのに、どうして邪魔をするの。
静かに咲かせておいて。そっとしておいて。
そうすれば私たちは、この世界を楽園に出来る。
口ばかり達者で、気障な調で愛を語ったところで、その胸の内のどこに愛がある?
野の花を自然から切り離し手元で育て、
賞賛を浴びることが花を愛することだなん
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