星の子供たち/Utakata
 
僕が暖炉の火を入れようとしている
ときにノックの音がして、扉を開けてみたら目の前に君
がいた。亡霊のような姿で、旅の成果どころか言葉一つ
口に出さない君に、僕も黙って着替えと熱いお茶とタオ
ルを準備する。君の衣服からは濃い緑色の匂いがした。
暖炉を挟んで向かい合った僕たちの間に再び長い時間が
流れて、やっと君は濡れた服のポケットから一掴みの割
れたビー玉を取り出してみせた。これしか残ってなかっ
たよ。そういって君は泣きそうな顔で笑った。硝子球は
記念にキャンディーの缶に詰めて、今でも暖炉の上に大
切に取っておいてある。

4.
星が見たいなとその子がいうので、真夜中に自転
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