星の子供たち/Utakata
 
自転車を引っ
張り出した。満月の下で、広いキャベツ畑に挟まれた道路
をひたすら走る。各々のキャベツの中心には小さな結晶が
育っていて、あれは水晶なんだよと後ろに座ったその子が
教えてくれたけれど、本当のところは何も知らない。星み
たいだねとその子が言った。辿りついた先は地面に空いた
大きな深い穴で、運動場くらいありそうなその穴の底は暗
くて何も見えない。穴の淵まで歩いていったその子は僕を
振り返る。ここから星が生まれるんだよ。言われるままに
穴の中をじっと見つめていると、確かに底のほうにかすか
な光があるようにも思う。生まれるといいねと僕は言い、
満月の真っ暗な夜空を見上げる。中天に浮かぶ白い衛星の
他には、何一つない黒い夜空を見上げる。私は星の子供な
んだよとその子は言うけれど、本当のところは何も知らない。

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