欅通り/hope
突然君は振り返り、すぐ後ろにいた僕と目が合った。
欅の木に椋鳥たちが帰ってくる少し前で、街灯に灯りが灯った直後で、足許まで夜がやってきていた。ちっとも優しくない優しい風が、君の髪を揺らしている。
零れ落ちた雫は空からではなくて、君から零れ落ちた。僕はその雫がアスファルトの上で砕け散る様を見届けてから目を閉じた。
うそつきな僕はいつも夢ばかりみている。
きっとこのまま黙っていたほうがいいときだってあるのかもしれない。たとえば今、この瞬間とか。
どこまでも続く欅並木は、目の前の夜を少しだけ近づける。
急ぐ必要もないのに早足で歩いてしまうときだってある。ゆっくりと歩
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