べつに渇いちゃいない(Do you like me?)/ホロウ・シカエルボク
 
夕焼けが雨雲に隠れて
使った後の絵具バケツみたいな色になる
マクドナルドの店先で備え付けの灰皿に吸殻を押し付けながら
やがて来るだろう雨の気配に唇をゆがめている
「オレンジの缶詰を買ってくる」と言ったきり
二度と帰ってこなかった娘、だけど
別に心底愛していたわけじゃなかった
ただひとりでいるよりはマシだろうと
たったひとりでいるよりはマシだろうと思ってただけ
趣味のいい制服を着た小学生の男子がふたり
水溜りを跳ねながら通り過ぎていく
早く帰らないともうすぐに日が暮れるよ

此処に吹く今時の風が妙に冷たいのは
高層建築のおもてをたらふく撫ぜてくるから
鉄筋コンクリートの
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