海の彼を、泳ぐ/山中 烏流
 
ける/突き刺す
視線の色が、一番
水彩のようで

彼が知るのは
肌の滑りと
耳から流れる
波のさざめきと、
それから

水面の、揺らめきくらいだ


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 (彼は海であり、また海が彼であることを、私だけが知っていることを誰が知っているのだろうか。
 
 胎動を繰り返した彼は、小さな死を迎えたその時でさえ、私の顔を見れないでいることも、だ。

 逸らした目線の色を、もう私は水彩に例えられないでいる。彼も同じように、もう私を魚へと還すことはできないのだから。)


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小さな気泡が
現れては、弾けて
それらは小さく

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