緋竹の王妃/蒸発王
 
くした女が
化生に身をやつし
其の王妃に魅入られたなら
心と引き換えに
緋竹(ひちく)の女竹を分けてくれる


竹林に入ると
宵暮れの夕日が差し込んで
竹の影が体に落ちて
黒い縦じまが着物に映った
刹那
目の前に
巨大な白虎が現れ


悲しみをおくれ



と囁いたそうでございます


其れが
王妃

泣きはらした王妃の目は
真っ赤に熟れ
まだ悲しみ足りない目は
他人の悲しみも求め
飢えていたのです


叔父は
妻を失った悲しみを
そっくり王妃に渡して
代わりに
竹林の中心にある
王妃が流した赤い涙で染め抜いた
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