緋竹の王妃/蒸発王
いた
緋色の竹を譲り受けたのです
それで出来たのが
其の天女様でございます
ええ
叔父は燃え盛る妻を見たとき
彼女が天女に見えたのでしょう
網膜に焼きついた
美しい女の姿を
遺したかったのでしょうね
叔父ですか?
これをこさえてすぐ
顛末を日記につけると
胸を突いて死んでしまいました
血の池の中で笑って逝ったそうでございます
いいえ
呪い なんてそんなもの
ただただ喪失が悲しく
お互いに愛おしかっただけで
あの二人の間に
呪いも恨みも
本当のところは無かったのでしょうよ
何故って
今わの際で叔父は笑い
そこに居る天女様も
笑っているのですもの
『緋竹の王妃』―羽衣―
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