緋竹の王妃/蒸発王
 
誰でも知ってることですが

この羽衣に使われている
世にも珍しい
緋色の竹を切りだすのは

心と引き換えなんでございます


叔父は酔狂な人でした
三度の飯より竹人形が好きというんでね
腕はぴか一ですが
ろくに飯も食わずに
竹林に行って竹を削り
鬼のように人形を作っていましたよ

可哀そうなのは嫁さんでね

自分を見ないで
年がら年中竹ばっかり見ていた
夫が
竹が
羨ましくて
恨めしくて
仕方がなかったんでしょうね


嫁さんは
竹林に火を放ちました

着物の裾が
酸素と火炎で燃え上がり
髪が逆立って紅蓮にたゆい
紅をひいた唇から吐
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