映画日記、ただし日付はてきとう/渡邉建志
 
かりやすい感じになってきてしまって、なんだかまるでスクリャービンを逆回転しているみたい。スクリャービンのソナタ4番ぐらいの微妙さ(調性と非調性の間)が、「マザー、サン」とか「ロシアン・エレジー」の時代なのだろう。音の感性と実験性。それと大衆性が見事に同居している。同じ意味で凄まじい映画に「エル・スール」があって、この2つをあたしのベストワンにしたい。
これまで違和感を抱いてきたソクーロフの色の少なさや、歪みレンズの抑圧感や、意味不明だと思った長回しが、「マザー、サン」と「ロシアン・エレジー」では俄然、必然性をあたしの中で持ちはじめた。全ての細部が。切ないほどに。とくに「マザー、サン」はいちど感情
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