映画日記、ただし日付はてきとう/渡邉建志
 
となく小さい時代の彼女と似ているのである。とくに、話し方の、なんかこう、額の動き方とか、唇の間に紙一枚挟んでいるみたいな微妙なはにかみとか。それにしても寡黙な映画。これほどに沈黙を美しく描いた映画がほかに存在しうるだろうか。これほどに暗闇を美しく描いた映画がほかに存在しうるだろうか。それに、グラナドスの「スペイン舞曲」の使い方はほんとうに素晴らしい。あの神のような南の写真シーン。ここで流れるのがスペイン舞曲5番「アンダルーサ」。夢を思い出させるようなゆっくりしたテンポ。おそらく世の中で一番遅いテンポの演奏。映像とあわせるためにエリセが演奏者に要求したとしか思えない。この遅さでは、最高性能のピアノで
[次のページ]
戻る   Point(5)